サブリース契約とは、賃貸ビルやアパートの経営・運営形態の1つで、オーナーから管理会社がビルを一括で借り上げ、一定の家賃収入を保証する方式です。
管理業務の煩雑さや空室・家賃滞納のリスクを回避できる運営方式ですが、収益性が下がるなどのデメリットもあるため、契約の仕組みを詳しく理解しておく必要があります。
この記事では、サブリース契約の意味・仕組み、他の方式との違い(管理委託・空室保障など)や費用の相場、メリット・デメリット、サブリース契約の注意・確認事項、賃貸ビル経営の事業収支を最大化する方法や建築事例を紹介しています。
サブリース契約とは?
サブリース契約とは、賃貸ビルやアパートの経営・運営形態の1つで、管理会社が不動産オーナーからビルを一括で借り上げ、一定の家賃収入を保証する方式です。管理会社は借り上げたビルやアパートを入居者に転貸(又貸し)し、ビルの管理業務をすべて管理会社が行います。
管理会社は、ビルの空き部屋の有無に関わらず、オーナーに一定の賃料を保証します。保証される賃料は、満室時の約80%〜90%です。オーナーは、毎月決まった金額の収入が見込めるため、事業収支の見通しが立てやすくなります。
一方で、サブリース契約には収益性が下がる、長期間での契約金額の保証はされないなどのデメリットも存在します。そのため、賃料収入を最大化した賃貸ビル経営を実現させるためには、サブリース契約の特性を理解したうえで契約を結ぶ必要があります。
サブリース新法とは?
サブリース新法とは、サブリース事業者に新たにルールを課し、不動産オーナーとサブリース事業者とのトラブルを未然に防ぐことを目的に、2020年に施行された法律です。正式には「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」における「サブリース業者と所有者との間の賃貸借契約(特定賃貸借契約)の適正化に係る措置」を指します。
過去、サブリース契約をめぐってさまざまなトラブルが発生しました。2019年の国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査結果」では、「サブリース事業者から十分な説明がないまま契約を求められる」などのトラブルが発生していることがわかります。
不動産オーナーとサブリース事業者との間で発生したトラブル(国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査結果」(家主)より)
こうした問題を受け、サブリース新法では「誇大広告の禁止」「不当な勧誘行為の禁止」「特定賃貸借契約締結前の重要事項説明」の3つの規定を法律に盛り込んでいます。サブリース新法により、サブリース事業者がオーナーに契約内容について正確な情報を伝える必要があるため、契約内容を理解しないまま契約を結ぶ危険が少なくなりました。
国土交通省は、特定賃貸借契約の重要事項説明の記載例をガイドラインとして公開しています。
特定賃貸借契約 重要事項説明書の記載例(国土交通省「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」より)
この記事では、契約の際に注意すべきポイントや確認事項についても詳しく紹介しています。実際に契約を結ぶ前に確認することをおすすめします。
ビル経営・アパート経営方式(サブリース・管理委託・自主管理等)の違い
賃貸ビル・賃貸アパートの経営方式には、サブリース以外にも管理委託や自主管理などがあります。また空室保証や滞納保証など、部分的な保証を受けられるサービスもあります。それぞれの経営方式や保証によって、委託する管理業務などに違いがあるため、特徴を理解したうえで契約することが重要です。
ここでは、それぞれの経営方式と保証について詳しく解説します。
サブリース | 管理委託 | 空室保証 | 滞納保証 | 自主管理 | |
---|---|---|---|---|---|
費用 | 約20% | 約5% | 約15% | 約15% | – |
契約期間 | 2年〜 | 2年 | 2年〜 | 2年 | – |
入居者の契約 | サブリース会社 | オーナー | オーナー | オーナー | オーナー |
入退去の管理 | サブリース会社 | 管理会社 | – | – | オーナー |
建物の管理 | サブリース会社 | 管理会社 | – | – | オーナー |
敷金・礼金 | サブリース会社 | オーナー | オーナー | オーナー | オーナー |
サブリース|サブリース会社がオーナーから建物を一括で借り上げる方式
サブリースは、サブリース会社がオーナーから建物を一括で借り上げる経営方式です。サブリース会社は建物の管理や入退者との契約も一括して請け負います。借主はオーナーではなくサブリース会社と賃貸契約を結び、賃料もサブリース会社に支払います。
サブリース会社は、ビルの空き部屋の有無に関わらず、リース料金としてオーナーに満室時の家賃収入の約8割〜9割を保証します。安定的に決まった金額が収入となる一方、満室時でも満額が収入にはなりません。
サブリースは、借入金でマンション建設を行った場合など、金融機関への返済を考慮して安定した収入を望む人や、日々の管理業務の煩わしさを回避したい人におすすめです。
管理委託|オーナーが建物や入退居の管理を管理会社に委託する方式
管理委託は、オーナーが建物や入退居の管理を管理会社に委託する経営方式です。管理会社が行う項目は、契約によって異なりますが、修繕や清掃、メンテナンスなどが含まれます。賃貸者契約などの事務手続きや家賃の回収、空室時の入居者募集など入居者に関わる管理も管理会社が行います。
オーナーは毎月の家賃収入から一定の割合の金額を管理料として支払う事で、多岐にわたる管理業務を管理会社が代行します。管理費用は、一般的には回収家賃の約5%です。
管理委託は、入居者との契約や建物の改修など専門的な管理業務を専門の管理会社に依頼したいオーナーにおすすめです。
空室保証|保障会社が空室期間の家賃を保障する方式
空室保障は、不動産会社や保証会社が空室期間の家賃を保障する経営方式です。オーナーが毎月定額の保証料金を保証会社に支払うことで、空室時の家賃を不動産会社が保障することになります。
空室が発生しても大きな収入減にならないことが空室保証のメリットです。一方で、契約内容にもよりますが、空室分の満額が保障されるとは限りません。
サブリースとは異なり、物件の管理、入居者の募集などはオーナーが行います。管理委託などと併用して契約することも可能ですので、管理業務を外部に委託したい場合は併用をおすすめします。
空室保証は、空室時の収入減による借入金返済などを心配される人におすすめです。
滞納保証|保証会社が入居者の家賃滞納をした場合に立て替える方式
滞納保障は、保証会社が入居者の家賃滞納時に家賃を支払う経営方式です。入居者が家賃を滞納した際に、保証会社がオーナーや管理会社に家賃を支払います。入居者が保証会社に滞納した際の保証委託料を支払うため、オーナーが保証会社に費用を支払うことはありません。
借主は契約時に滞納した際の保証料についてサインする必要があるため、審査の段階で比較的優良な入居者が集まりやすくなるメリットがあります。一方で、保証料の支払いが入居者への負担増になり、他物件に決めてしまうケースもあります。
滞納保証は、家賃滞納時の収入減をできるだけ回避したいと考える人におすすめです。
自主管理|オーナーが自分で建物管理や入居者管理を行う方式
自主管理は、オーナーが自分で建物管理や入居者管理を行う経営方式です。オーナー自身が行う項目として、建物の清掃、入退居時の補修や長期的修繕、家賃収入の管理や入居者からの問合せの対応などがあります。
安定した入居率を保つために、建物の定期的な清掃や補修は必要です。多岐にわたる管理業務を全てオーナー自身が行う必要がある一方、管理会社に委託しないため、毎月の管理費を支払う必要がなく、収入が最大化されます。
自主管理は、多くの管理業務を自分で行う時間を確保でき、さらに物件の近くに住んで頻繁に物件に足を運ぶことができる人におすすめです。
サブリース契約の3つのメリット
サブリース契約には、急激な空室状態による収入減リスクを回避できたり、物件の管理をサブリース会社に委託することができるなど、ビル経営者にとってメリットがあります。ビルオーナーが行う物件や家賃の管理業務は多岐にわたるため、その業務をサブリース会社に委託することができます。
ここでは、サブリース契約を行うメリットについて紹介します。
メリット1:空室・家賃滞納による収入減のリスクを回避できる
サブリースでは、サブリース会社との契約金額が毎月一定の収入となるので、急激な空室や滞納による収入減のリスクが回避できます。これによって、将来的な事業収支の見通しを立てやすくなります。
一般的な管理委託や自主管理による経営方式では、空室や家賃滞納が発生した場合に、当初想定していた家賃収入が見込めない場合があります。
一方、サブリース会社との契約金額は数年毎に見直されるのが通例です。新築時の契約金額が何十年も長期的に継続しないため、注意が必要です。
メリット2:管理業務を委託できる
サブリースの場合、多くの管理業務をすべてサブリース会社が行うことになり、オーナーの業務が軽減されます。
安定した入居率を保つためには、定期的な清掃や補修などの建物管理や、入居者の募集や家賃の管理を行う必要があります。時には入居者からの要望やクレームに対応する必要もあります。サブリースではこうした管理業務をすべてサブリース会社が行います
契約内容によっては、建物の維持管理費用はオーナー負担となる場合もあります。事前に契約内容を確認することをおすすめします。
メリット3:入退去時の手続きなどの煩雑さがなくなる
サブリースの場合は、入居者との賃貸契約はサブリース会社が行います。入退去に関する様々な業務をすべてサブリース会社に依頼するため、オーナーの煩雑さがなくなります。
管理委託の場合でも、オーナーは入居者との賃貸契約や契約更新手続きをそれぞれの入居者毎に行う必要があります。
退去時には、部屋の損傷具合の立会いやその補修の手配を行い、次の入居者募集の準備をする必要があります。補修工事が完了すればその確認も行う必要があります。オーナーにとってこうした煩雑さがなくなることは、サブリースの大きなメリットのひとつです。
サブリース契約の5つのデメリット
サブリース契約には、メリットだけでなく、満室時に収益性が下がるなど、ビル経営者にとってデメリットがあります。
サブリース契約については、国土交通省の「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」のページに、契約にあたってのトラブルや解約に関する問題が掲載・指摘されています。賃貸住宅管理会社、家主(オーナー)、入居者それぞれの調査結果がまとめられており、サブリース契約の課題・問題点を多角的につかむことができます。
デメリットを理解してサブリース契約書の内容確認を行なったり、長期的収支計画を検討することをおすすめします。
ここでは、サブリース契約を行うデメリットを紹介します。
デメリット1:満室時の収益性が下がる
サブリース契約のリース金額は、契約内容にもよりますが、一般的には満室時の家賃収入の約8割~9割が通例です。
空室があっても一定金額が収入となりますが、満室の場合でも満額の家賃が入る訳ではありません。その分、満室時の収益性が下がることになります。
特に、新築から約5年間は入居者に人気があるため、満室稼動の可能性が高くなります。もっとも収益を得やすい時期に収益性を下げることになるため、長期的な事業収支を考えるうえでデメリットとなる傾向にあります。
デメリット2:長期間での契約金額の保証はできない
サブリースでは、契約金額が長期的に変わらないということは一般的にありません。数年毎に家賃の見直し協議が行なわれます。建物は年々古くなり傷みも出てきますので、周辺の新築物件との家賃バランスや、変動する経済状況の中で入居者を獲得していく必要があるためです。
過去、サブリースは賃料減額をめぐるトラブルなどが発生するなど、社会的に問題となった時期がありました。サブリース新法によって、契約内容を理解しないまま契約を結ぶ危険が少なくなり、トラブルも減少しましたが、家賃の見直しが行われることは事実です。
家賃を下方修正することは、入居者募集を考慮すると仕方のないことですが、収支上は収入減となりますので、事業収支を検討するうえでは注意が必要です。
デメリット3:賃貸状況の内実が不透明になりやすい
サブリースでは、サブリース会社はオーナーから借りた建物を他の入居者に転貸することになります。そのため、オーナーは自分の建物にどういった人が入居しているか分からなくなるという可能性が生じます。
サブリース以外の契約においては、オーナーは入居者の情報を理解した上で契約を結ぶことになります。しかしサブリースの場合は、サブリース会社と入居者間の契約となるため、入居者の情報がわからない場合があります。
家賃の見直しを検討する場合、現在の入居状況を正確に把握する必要がありますが、サブリースによって賃貸状況が不透明になっていれば、オーナーが空室率など家賃見直しのための根拠を知ることができない可能性があります。サブリースでも賃貸状況を把握できるよう、事前に契約内容を確認するようにしましょう。
デメリット4:建築費用の交渉や品質確保が難しい
遊休不動産に対して、建設会社や管理会社がビルの新築とサブリースをセットで勧める場合があります。このような場合、ビルの建設費などの支出とサブリースによる収入を合わせた金額が事業収支として提示されるため、個別に初期費用の交渉や品質を確保することが難しくなります。
建設費が高くなければ、借入金の返済額も増えますので、収支を圧迫することに繋がります。建物の室数や面積や仕様を落とさずに建設できる建設会社があるかなど、初期の建築費用の妥当性を検討し、建設費を少しでも抑えることができれば、収支計画が良い方向に改善されます。
そのためには、信頼のある専門家に工事費が妥当かどうかのセカンドオピニオンを依頼することも有効です。さらに、入居率を左右する設備機器が導入されているか、居住性を担保する断熱性能や内装素材が確保されているかを確認することは、長期的な運用の安定性のためにとても重要です。
デメリット5:解約が難しい、もしくは違約金が発生する
長期の契約を結ぶ前提でのサブリース契約の場合、契約内容に解除条項の記載がないと、解約をしたい場合に違約金が発生する等の問題が生じます。
サブリースの解約に関する契約内容として、下記のような記載が考えられます。
- 解約を申し出る期間(解約の◯か月前までに申告する必要がある、など)
- 解約時に発生する費用(違約金)
契約の解除条項の記載がないと、オーナーが解約したい場合に解約できなくなる可能性もありますので、契約の解除条項の記載があるかの確認が必要です。
サブリース契約を提案された時に確認すべき4つのポイント
管理会社からサブリース契約の提案をされた時は、家賃の改定協議の期間や、現状復帰や機器の法定点検をどちらが行うかなど、いくつかのポイントで注意が必要です。
これからご紹介するポイントに注意することで、サブリースのメリットを最大化することができます。
ポイント1:サブリース賃料の改定協議の期間を確認しよう
サブリースの契約賃料は、長期的に不変ではありません。2年~3年毎に賃料改定の協議を行うことが一般的です。
改定協議を行う理由として、建物の損傷や破損、経済事情の変動によって、契約金額では転貸することが難しい状況になる可能性があるためです。
事業収支を検討するうえでも重要な内容ですので、サブリース賃料の改定協議の期間について、契約内容を確認することをおすすめします。
ポイント2:サブリース会社の利益構造を調べ、利益相反する部分を確認しよう
サブリースは、基本的にオーナーとサブリース会社が利益相反する構造になっています。
たとえば、入居者が増えて家賃回収額が上がっても、それに連動してオーナーの収入が増える構造ではありません。あるいは、リース料金が見直され全体の家賃収入が下がれば、オーナーの実質的な収入は減少します。
サブリースの利益構造を理解したうえで、契約を検討するようにしましょう。
ポイント3:サブリース契約の解約条件を確認しよう
サブリース契約は、契約内容に解除条項の記載がないと、解約をしたい時に違約金が発生する等の問題が生じる場合があります。そのため、契約解除の内容について事前に確認することをおすすめします。
過去のサブリースに関するトラブルの中に、オーナーが解約したくても契約内容に解約条件が含まれていないため、解約できないといった事例が報告されています。現在ではサブリース新法によって契約内容を事前に説明することが義務付けられましたが、サブリースを契約する場合は意識的に解約条件を確認することが重要です。
解約条件には、解約を申し出る期間や、解約時の違約金などの記載が含まれます。解約時のリスクを事前に理解したうえで、契約するようにしましょう。
ポイント4:原状回復費など諸費用をどちらが負担するかを確認しよう
サブリースは、ほとんどの管理業務をサブリース会社が請け負う管理形態ですが、契約内容によっては建物の維持管理費用がオーナー負担となる場合があります。そのため、入居者が退去する際の現状回復費など、管理に関わる諸費用をオーナーとサブリース会社のどちらが負担するか確認しておくことが重要です。
建物を維持するための諸費用には、建物本体への破損や損傷の改修費用だけでなく、火災報知器などの機器類の点検や維持費用、樹木の剪定、共用部分の電気代など、多くの項目があります。
建物の維持管理に関わる諸費用をどちらが負担するかを事前に確認することで、正確な事業収支を計画することに繋がります。
アパート・ビル経営で事業収支・賃料収入を最大化する方法とは?
アパート・ビル経営で事業収支や家賃収入を最大限にするためには、運営の全てを任せるのではなく、ある程度の手間やリスクを自身で負うことで、将来的な収益を確保していくことが大切です。
加えて、適切に管理や修繕を続け、入居者が退去したくないような状態を保持していく必要があります。そのためには、信頼できる不動産会社や建物への見識のある専門会社と一緒に建設・運営を進めていく必要があります。
長期的な運営の中では、空室・満室の波が随時あることを理解した上で、煩雑な管理については管理会社に依頼し、状況に応じた流動的な家賃検討や、人気に繋がる工夫を随時検討することで、長期的な収入を得ることが良いのではないでしょうか。
ここでは、アパート・ビル経営で事業収支を最大化するための方法について紹介します。
周辺相場を調査して、適正な賃料を設定しよう
周辺の同事業の賃料をリサーチすることで、適正な賃料の設定が可能になります。単に周辺相場より安い賃料を設定するのではなく、仕様やグレードを踏まえた適切な賃料とすることで、入居率の向上につなげることができます。
人気のある物件とは、値段が同規模他物件より安いだけではありません。設備の充実やセキュリティー、清掃状況など、入居者を惹き付ける部分が賃料以外にも必ずあります。
入居率が下がれば収入減に直結します。周辺の賃料相場を見つつ、家賃を少しでも上げることができるグレードにすることで、長期的に収益の上がる物件に仕上げていくことが大切です。
管理・運用の外部委託の内容を取捨選択して、収入を最大化しよう
物件の管理業務には、共用部の清掃、補修・修繕、法定点検の対応、入居者の募集や契約、家賃の徴収、退去時に手続きや部屋の改修など、項目は多岐にわたり、すべてを自身で行うことはとても大変です。
賃貸ビルの管理業務の例
入居者に関する管理 | 建物に関する管理 |
---|---|
賃貸借契約・入居・契約更新の手続き | 共用部分の清掃 |
オーナー・入居者間の連絡や要望調整 | 設備機器の法定点検対応や保守 |
入居者からの故障部の補修依頼やクレーム対応 | 建物や設備についてのクレーム対応 |
家賃の徴収や未入金時の督促 | 退去時補修手配と確認 |
これらの項目を管理会社という専門家に依頼することで、オーナーは不動産経営という一番重要な面に注力することができます。
サブリースや空室保証では、空室などによるオーナーのリスクを回避できますが、費用が発生するため、その分の収益性が下がります。管理・運用を委託する内容を取捨選択することで、収入を最大化するよう心がけましょう。
想定賃料に適したグレードの建築費を設定しよう
建物の建設費は、設備の仕様や仕上げ素材のグレードによって大きく変動します。高い仕様の設備や材料を使えば建設費は上がり、結果として高い家賃設定をしないと収支が合わないという事が生じます。
加えて、地域毎に家賃相場がありますので、その相場を大きく逸脱しては入居者の予算にそぐわなくなります。その結果、入居率の低下に繋がりますので、地域の適正家賃の範囲内で収益が成立する家賃設定をすることが大切です。
建設費の大きな増額をせずにグレード感を上げる工夫をすることは、入居率の向上や、収益を最大化する手段としてとても有効です。想定する賃料に適したグレードの建物にできるよう、収益性に関するノウハウを持った建築士に依頼するようにしましょう。
適正規模の建築会社を選ぼう
知名度が高く規模の大きい建設会社に依頼した場合、広告費など実際の工事にかかる費用以外の金額が計上される可能性があるため、建設費が高くなることは避けられません。
一方、地元の小さな規模の建設会社にビル建設を依頼した場合、建設費が安くなる場合がありますが、技術力が不足する場合があります。
建物の規模によって、その工事を行うにふさわしい規模の建設会社を選定することで、コストと性能のバランスがとれた建物建設に繋がります。適正規模の建築会社を選定して、事業収支の最大化につなげましょう。
事例紹介:賃料収入を最大化したビル・アパート経営事例
賃料収入を最大化したビル・アパート経営を行うためには、収支に配慮した事業計画と建物の計画が必要です。
ここでは、office EAが関わった実際の賃貸ビル・アパートの事例をもとに、賃料収入を最大化するために行った工夫を紹介します。
事例1:アミーレ新大橋|仕様UPによる工事費増を最小限にし、グレードをUPさせた事例
墨田川にほど近い江東区新大橋という恵まれた立地に立つ賃貸マンションです。
もともと2階建ての店舗併用住宅がありましたが、この場所の収益可能性を最大限に引き出すための方策を模索しました。
閑静な住宅地であるため、事業主は計画可能な最大室数を確保した賃貸マンションを要望されました。また高級分譲マンションが多いエリアのため、そのグレード感に引けを取らない賃貸マンションとするために、仕様を向上させつつ工事費の増額を最小限に抑える工夫をしました。
アミーレ新大橋における賃料収入最大化のポイント・効果
アミーレ新大橋における賃料収入を最大化したポイント・効果は以下の通りです。
- 最大容積率を消化しながらも、可能最大室数を確保して、家賃収入の最大化を実現した
- 既視感のあるマンションデザインにしないことで周辺マンションと差別化し、家賃増につながるようにした
- 工事費増につながらない、色や開口部の形の工夫によって全体をデザインした
- 安価なタイル使用しながら、高級感のあるデザインを実現した
- 小さな面積で済むエントランスロビーは高い仕様のレンガを使用して高級感を演出した
- 離れた場所からの印象も加味してデザインすることで、居住者のプライド感が家賃増につながるようにした
事例2:ファーストコーポラス15|部屋数を最大化した事例
駅前の商業エリアに建つ店舗とマンションの複合ビルの計画です。
1階部分を店舗用途とすることで、通常は人気のない1階住戸による空室リスクを回避しました。
日影規制の中で最大室数を確保するために、全体を小さなボリュームに分割しながら計画を進めたことにより、他社提案よりも3室多い計画となり、毎月約25万円の収入UPに繋がりました。
本建物は、office EAのグループ内の不動産会社が所有し、自社で管理を行うことで、支出を最小限に抑えた収益性の高い物件となりました。
ファーストコーポラス15における賃料収入最大化のポイント・効果
ファーストコーポラス15における賃料収入を最大化したポイント・効果は以下の通りです。
- 人気のない1階住戸を計画せずに店舗を設けることで、1階部分の安定収入に繋げた
- 日影規制をクリアするために細かなボリューム操作を行い、他社提案の室数より3室多い計画が成功した
- 細かなボリューム操作が一般的なマンションにはないデザインとなり、周辺マンションとの差別化を図ることができた
- 複雑な外観ながら、平面上は一般的で効率的な平面計画とし、工事費の増加を抑え、長期的に保有する商品として有効な計画とした
事例3:CASA・S|貸せない部分を最小限にした事例
約25坪の土地の賃貸マンションです。
収支上、木造3階建てという要望があり、ここでは容積率消化が目標ではなく、いかに収益部分となる面積であるレンタブル面積を増やし家賃UPに繋げるかを目指しました。
解決方法として、共用階段から各室にアクセスすることで共用廊下をなくし、住戸内の廊下を最小限とすることで、収益部分となる居室面積を最大にしました。
共用廊下などの貸せない面積を可能な限りなくし、限られた敷地内で最大の収支効率を目指しました。
CASA・Sにおける賃料収入最大化のポイント・効果
CASA・Sにおける賃料収入を最大化したポイント・効果は以下の通りです。
- 収益部分の面積を最大化するために、居室内廊下を最小限にして家賃UPを図った
- 共用廊下のない効率的な動線計画とし、各住戸面積を最大限確保した
- 南北の2室共に、南面にバルコニーを計画し、募集時のメリットが入居率UPに繋がるようにした
- 3階は勾配天井を利用した特徴的な意匠として、3階部の家賃UPを図った
- 木造の比較的安価な工事費だが、鉄骨階段と金属板の外壁によって、木造らしくない印象をつくり、周囲の木造賃貸以上の家賃設定を可能にした
まとめ:サブリースの特性を知り、適切なビル・アパート経営を実現しよう
サブリース契約は、管理業務の煩雑さや空室・家賃滞納のリスクを回避できる運営方式ですが、収益性が下がるなどのデメリットも多く発生します。各運営方式の特性を理解したうえで、適切な賃貸ビル・アパートの経営を実現することが重要です。
この記事のポイントは以下のとおりです。
- サブリース契約は、管理会社が賃貸ビルを一括で借り上げることで一定の家賃収入を保証する管理方式
- 賃貸ビル・アパートの経営方式は、サブリースや管理委託、空室保証、滞納保証、自主管理で違いがある
- サブリース契約はオーナーのリスクを回避できるが、賃料収入が満室時の80%〜90%で固定される
- サブリース契約は契約金額の見直しが発生したり解約が難しい場合があるため、事前に契約内容を確認することが重要となる
- 賃貸ビル・アパート経営で賃料収入を最大化するためには、適正な賃料、リスク管理、建物のグレードの設定が重要となる
Office EAは、賃貸ビルの企画段階から、テナントビル経営の悩みや課題に寄り添い、収益性の高い賃貸ビル経営・賃貸アパート経営の実現を建築計画を通じてサポートいたします。サブリースなど複合ビル・マンションの経営の方法や賃料収入を最大化したビル経営方法に関してお困りの方は、お問合せフォームよりお気軽にご連絡ください。