賃貸ビル経営とは、ビルを建設や購入によって所有し、入居するテナントから賃料収入を得る不動産投資方法です。

高い収益性が期待できるなど土地活用としてメリットの大きい方法ですが、事業収支を最大化し安定させるためには、ビルの建設時から収益性を考慮する必要があります。

この記事では、賃貸ビル経営のメリットとデメリット、テナントビルの種類や賃料、賃貸ビルの依頼先、事業収支を最大化する方法や建築事例を紹介しています。

賃貸ビル経営とは?

賃貸ビル経営とは、ビルを建設や購入によって所有し、入居するテナントから賃料収入を得る不動産投資方法です。テナントからの賃料によって収益が長期間にわたって継続して得られ、アパート・マンション経営と比較して収入が大きいなどのメリットがあります。

鉄筋コンクリート造であることの多い賃貸ビルは、木造などの建物と比較して耐用年数が長いため、長期間の運用が可能です。また短期間で資産価値が下がるリスクが少ないため、安定して運用をつづけることができます。

一方で、収入はテナントの入居率と賃料に大きく左右されます。そのため、賃料収入を最大化した賃貸ビル経営を実現させるためには、入居率と賃料を高く設定できるよう、ビルの建設時から収益性に配慮した計画を行う必要があります。

賃貸ビル経営のメリット・デメリット

賃貸ビル経営には、収益性やビルの用途などの面でビル経営者にとってのメリットがあります。一方で、ビルを建設する土地や規模によって制限が発生したり、管理業務が発生するといったデメリットも存在するため、注意が必要です。

ここでは、賃貸ビル経営のメリットとデメリットを紹介します。

メリット1:高い収益性(賃料)が期待できる

テナントビル・賃貸ビル経営は、高い収益性が期待できます。オフィス用途の場合は、賃貸マンションと比べて賃貸期間が長くなる傾向にあるので、安定した収入に繋がります。ビルの賃料は専有面積に比例して増加しますので、間取りでおおまかな賃料が決まっているため賃料が専有面積と比例しない賃貸マンションと比べて、賃貸ビル経営は高い収益性があると言えます。

また、退去時にはテナント側の工事による現状復帰が基本となるので、オーナーにとって修繕費が抑えられるメリットもあります。

このように、賃貸ビルで収益性を高めるためには、テナント用途による特性を理解した上でビルを建設する必要があります。

メリット2:複合ビルとして複数の用途を入れられる

賃貸ビルには、1つの用途だけでなく、複合ビルとして複数の用途を入れることができます。

例えば、オーナーが上階に住みながら、下階をテナントを貸すことができます。テナントとしてオフィスをいれることで落ち着いた雰囲気のビルにしたり、店舗をいれることで利便性の高いビルにできるなど、オーナーの意向を反映したビルにすることができます。

また、地域の動向に合わせてテナントの用途を変えるなど、世情に合わせた流動的な運営ができるので、収益性につなげることができます。ただし、テナントの用途が複合的になると、ビル建設の難易度が上がりますので、専門家である建築士に相談することをお勧めします。

デメリット1:土地のエリアや規模によって展開できる事業が限られる

賃貸ビル経営は、収益性を確保するために、土地のエリアや規模によって展開できる事業が限定される場合があります。

たとえば、駅から離れた住宅地では店舗などの用途の展開が難しかったり、繁華街の1階は住居募集には難しいことがあります。

賃貸ビルを建設するエリアの状況をしっかり判断しながら、用途の方向性を見定めた建物計画をすることが大切です。たとえば事務所用途には人を惹き付ける階段は不要ですが、飲食であれば集客に寄与する階段が必要になります。

上階に人を惹き付けるようデザインした階段のパース
上階に人を惹き付けるようデザインした階段のパース(正面)

上階へ人を惹き付けるようデザインした階段

デメリット2:建物と入居者対応の管理業務が発生する

賃貸ビル経営を行えば、ビル経営者には補修や設備メンテナンスなど建物の管理業務が発生します。また入居者の募集や契約更新を含めた管理業務も発生します。

賃貸ビルの管理業務の例

入居者に関する管理建物に関する管理
賃貸借契約・入居・契約更新の手続き共用部分の清掃
オーナー・入居者間の連絡や要望調整設備機器の法定点検対応や保守
入居者からの故障部の補修依頼やクレーム対応建物や設備についてのクレーム対応
家賃の徴収や未入金時の督促退去時補修手配と確認

清掃などは定期的に行う必要があり、建物の破損や設備の故障は、発生した度に対応する必要があります。また入居者の退去時の補修や、新しい入居者の募集なども行う必要があります。

こうした管理業務は専門性が高い内容もあり、管理会社などに委託することによって煩雑さを軽減することができます。

賃貸ビル・テナントビルの用途・種類・特徴

賃貸ビル・テナントビルには、用途ごとに特徴のあるいくつかの種類があります。用途の種類によっては、必要となる設備や仕様が異なる場合があり、建設費用の増減に大きく関わることになります。

たとえばオフィス用途では、がらんどうの箱を建設すれば良いですが、共同住宅ではキッチンや風呂が必要となり、建設費が上がることになります。また医療系のテナントの場合は、医療機器のための大きな電気容量が必要となり、変圧器などの電気設備が建物として必要となります。

ビルを建設する前から賃貸事業の方向性や企画を検討することで、誘致したいテナントに対応したビルづくりが可能になります。

ここでは、主なテナントビルの種類について紹介します。

ビルの種類 概要
オフィスビル
  • 建物の面積やグレードが賃料や工事費に直結する
  • オフィスは住宅よりも賃料が高くなる傾向にある
  • 快適性の高い執務空間のための建築計画が必要
メディカルビル
  • 調剤薬局の入ることで利便性の良いビルになる
  • 医院は景気に左右されにくく、移転が少ないため長期契約が見込める
  • 診療科目により医療機器の電気容量が大きくなるので注意が必要
飲食ビル
  • 駅前や繁華街の立地になるため、土地代が高くなる
  • 上階店舗に誘導するための工夫が必要
  • 厨房機器のガスや電気の容量、排気や臭気対策に注意が必要
商業ビル・
ファッションビル
  • 建物の面積やグレードが工事費に直結する
  • 立地条件によって入るテナントの方向性付けが必要
  • 複数の目的地(雑貨、カフェ、書店など)を入れるなどによって集客の相乗効果を生む工夫が必要。その場合は、カフェができるようにキッチン設置対応を行うなど、事業提案と建築計画上の工夫が必要
賃貸マンション
  • 都心部や駅に近い程高家賃となる。駅から離れる程家賃が下がるが、建設費は下がらないので収支に注意
  • オフィスなどに比べて住宅用途は面積が小さいので、退去による空室のリスクが減少する
  • 全住戸の住宅設備がイニシャルの工事費として掛かる
複合ビル
  • オフィスや生活品店などのテナントを見込めば、駅近でなくても良い
  • 上階にオーナー住居をつくることもできる
  • 下層階はマンションでは人気がないがオフィスや商業施設の需要はあるなど、複数の用途のメリットデメリットを組み合わせられる

上記の表以外にもテナントの種類や組み合わせがあります。

テナントの種類が複合的になると、建設の難易度が上がりますので、専門家である建築士に相談することをお勧めします。

土地オーナーが新築オフィスビルを依頼する依頼先とは?

土地オーナーが賃貸ビルを新築する場合の依頼先は、ハウスメーカーや不動産会社など、複数の選択肢があります。

ビルを新築した後には事業収支計画をもとに賃貸事業を進めていくことになりますので、建築関係の会社で、かつ事業収支について知識のある会社に依頼することが重要です。

ここでは、賃貸ビルを新築する場合、どのような依頼先があるかの事例を挙げています。

相談先 概要
ハウスメーカー 注文住宅の生産を主な業態とする会社。注文住宅に付随した事業としてオフィスビル・アパートの生産を行う。工業化・規格化されたビルを展開していることが特徴。一部を自宅とした複合ビルなどのノウハウもあるが、事業収支を踏まえた建設の相談ができない場合がある。
デベロッパー・不動産会社 宅地造成やオフィスビル等の開発、不動産賃貸を主な業態とする会社。開発事業に付随した事業として賃貸ビルの建設を行う。土地活用に精通しているため、収益性や事業収支に関するノウハウを持っている。プロジェクトに見合った規模の会社を選ぶことが重要。
ゼネコン・工務店 オフィスビルや住宅などの建設を行う会社。ゼネコンは大規模、工務店は中小規模のビル建設を行う。地域の不動産情報や賃料相場に詳しい可能性が高いため、適切な家賃設定や事業収支の計画がしやすい傾向にある。プロジェクトに見合った規模の会社を選ぶことが重要。
設計事務所 オフィスビルや住宅などの企画・設計を行う会社。建設は行わないため、工務店などと協力する。デザイン性で他物件との差別化を図ったり、賃料収入を最大化するための工事費削減を考慮した設計が可能。事業収支のノウハウを持っていない場合があるため、不動産会社出身の設計事務所など収益物件の経験がある会社を選ぶことが重要。

ハウスメーカー

ハウスメーカーは、注文住宅の生産を主な業態とする会社です。ハウスメーカーでは、ビルの工業化・規格化によって商品を展開している場合が多いです。規格化による製品管理によって、品質が安定しているため、一定以上の品質の建物については、比較的低価格で実現するメリットがあります。

一方、規格化商品の場合は、全てをオーダーメイドで作るのではなく、寸法など一定の規格内でビルを建てることになるので、土地の大きさや形状を最大限に考慮した計画を行う場合は、規格外の対応となり、建設費が増加する傾向があります。

定期点検や長期的な保障などが、ハウスメーカーのサービスとして付けられている場合が多いので、アフターフォローが充実してほしい人にはお勧めです。

また、賃貸ビル経営のノウハウを必ずしももっていないため、長期保有による収益性を踏まえた提案を受けられない場合もあり、注意が必要です。

賃貸ビルの建設をハウスメーカーに依頼する際の得意なポイントと苦手なポイントは下記のとおりです。

  •  規格化によって品質が安定しているため、一定以上の品質の建物を比較的低価格で実現できる
  •  定期点検や長期保証など、建物の完成後のアフターサポートが充実している
  •  賃貸ビル経営のノウハウを必ずしも持っていないため、収益性を踏まえた提案を受けられない
  •  規格化されているため、変形地など規格外のビルを建設する場合は建設費が増加する

新築オフィスビル・テナントビルの建設を依頼できる主なハウスメーカーは下記のとおりです。

新築オフィスビル・テナントビルの建設を依頼できる主なハウスメーカー

会社名 概要
パナソニックホームズ 3〜9階建てのオフィスビル商品「Vieuno ビューノ」を展開している。重量鉄骨ラーメン構造により耐震性と自由なプランニングを両立していることが特徴。
旭化成ホームズ ヘーベルハウスで有名な会社が、そのノウハウを活かして8階建てまでの中高層ビル商品「ヘーベルビルズ」を展開している。高い品質と、最長60年保証などの豊富なアフターサービスが特徴。
積水ハウス 企業価値の向上を目的としたオフィスビル商品「グリーンファースト オフィス」などを展開している。建物を永年保証する「ユートラスシステム」や積水ハウスグループによるトータルサポートが特徴。
大和ハウス オフィスビルや店舗、ホテルなど、幅広い土地活用方法を展開している。土地診断や需要調査など、事業企画から相談できることが特徴。

デベロッパー・不動産会社

デベロッパー・不動産会社は、宅地造成やオフィスビル等の開発、不動産賃貸を主な業態とする会社です。デベロッパー・不動産会社は土地活用に精通しているため、テナント用途の方向性や、事業収支に関するノウハウを持っています。

会社の規模も様々です。大規模で全国的な不動産会社は、広域的に多くの土地情報や、誘致するテナントとの関係を持っています。一方、地元に密着しながら開発を行っている不動産会社は、街の現況や動向や家賃相場を熟知していて、適切な事業提案に繋がります。

土地を所有しているが、どういったビルが収益上有効か知りたいといった、土地活用の方向性から相談したい人にお勧めです。また、新たに土地を購入して賃貸ビルを運営したい人や、現所有の土地を売って新たな場所で事業を展開したいといった土地の付け替えを検討している人にお勧めです。

建設部門を持たない不動産会社は、建設自体の専門的ノウハウを持っていない場合があるため、外注した工務店の建設費が適切か判断できないといったデメリットが生じる可能性があります。一方で、自社で建設部門を持たないことで、適切な建設会社をご提案できることはメリットです。

賃貸ビルの建設をデベロッパー・不動産会社に依頼する際の得意なポイントと苦手なポイントは下記のとおりです。

  •  土地活用に精通し、テナント用途の方向性や、事業収支に関するノウハウを持っている
  •  新規の土地購入や、土地の付け替えによって事業を展開する時のサポートができる
  •  建設自体の専門的ノウハウを持っていない場合がある

新築ビルの建設を依頼できる主なデベロッパー・不動産会社は下記のとおりです。

新築ビルの建設を依頼できる主なデベロッパー・不動産会社

会社名 概要
生和コーポレーション オフィスビルや店舗、福祉施設などの開発サービスを紹介している。自社で設計し、立地条件や周辺環境のマーケティングを通して収益性の高い事業計画を提案している。
東建コーポレーション 賃貸アパートを中心にオフィスビルなどの開発サービスを紹介している。テナントビル建設による土地活用のお役立ち記事を発信するなど、収益性に配慮したビル建設のノウハウを持っている。
信和建設 関西圏を拠点に、オフィスビルや商業ビルの開発サービスを紹介している。自社で賃貸ビル経営を行っているノウハウを活かした企画、設計、施行、管理を提供している。
大成ユーレック オフィスビルや社員寮などの収益物件の開発サービスを紹介している。15階建て程度までの中規模事務所ビルや、工場や店舗との複合ビルの設計・施行を提供している。
ポラス 賃貸ビルの設計から入居者募集、建物管理までのサービスを紹介している。地域密着型の経営による地域特性データを活かした事業計画や空室リスク軽減策などを提案している。
スターツCAM オフィスビルや物流拠点、店舗などの開発サービスや管理サービスなどを紹介している。BCP(事業継続計画)の観点に配慮し、先進的な技術を用いた建築計画を立案している。

ゼネコン・工務店

ゼネコン・工務店は、オフィスビルや住宅などの建設を行う会社です。賃貸ビルをゼネコン・工務店に依頼する場合、建物のイメージや建設費を把握しやすいことがメリットです。事業収支を検討するうえで大きな支出項目である建設費を正確に把握することができます。

大規模のビルを建設する場合、幅広い建設工事を一括で管理できるゼネコンに依頼することをお勧めします。また、小規模のビルを建設する場合、中小規模の工務店に依頼することで、建設費を抑えることができる場合があるのでお勧めです。

ゼネコン・工務店では、一般的に事業収支の提案は行いません。オーナー自身で事業収支を立てるか、ゼネコンの建設費を元に第3者に事業収支計算を依頼することになります。

賃貸ビルの建設をゼネコン・工務店に依頼する際の得意なポイントと苦手なポイントは下記のとおりです。

  •  事業収支の根幹である建設費を正確に把握できる
  •  ビルの規模に合ったゼネコン・工務店を選ぶことでコストメリット生まれる可能性がある
  •  事業収支計算を提案しない場合がある

設計事務所

設計事務所は、オフィスビルや住宅などの企画・設計を行う会社です。賃貸ビルの設計を設計事務所に依頼した場合、オーナーの建物への要望を加味しながら建物計画を進めることができます。

設計事務所への設計料は、事業の総予算の約1%程度となることが多く、割合が少ないため、どのくらいの規模の建物が建設可能か知りたいといった、事業計画の一歩目として相談しやすいです。

設計事務所は、建設費など大きな費用が発生する部分に配慮した適切な設計を行うことも可能です。そのため、こういうビルをつくりたいといった要望を設計士に伝えながら、事業収支を最適化した賃貸ビルの建設計画を進めたい人にお勧めです。

設計士は建物に関するプロですが、一方で土地の活用方法や費用に関する知識が少ない場合が多いです。その場合は、事業収支や建設諸費用についてオーナーが独自で検討する必要があります。office EAのように、不動産会社出身の設計事務所なら、賃貸ビルの事業収支についても相談できます。

賃貸ビルの建設を設計事務所に依頼する際の得意なポイントと苦手なポイントは下記のとおりです。

  •  初期の相談ではフィーが高くなく、建設可能な建物の規模を把握することができる
  •  オーナーの建物への要望を反映しながら計画を進めることができる
  •  土地活用や費用に関する知識が少ない場合が多い

新築ビルの事業収支を最大化するための3つのポイント

賃貸ビル経営の事業収支を最大化するためには、賃貸面積を増やしたり、お金を掛けないでグレードを上げるなど、幾つかのポイントがあります。

これらのポイントを加味した建物設計をすることで、費用を抑えながらも安定した事業収支に繋がる建物建設が可能となります。ここでは、新築賃貸ビルの事業収支を最大化するためのポイントを紹介します。

ポイント1:建築法規に精通した建築士を活用して賃貸面積を増やす

建築法規に精通した建築士に賃貸ビルの設計を依頼することで、賃貸面積を最大化し、収益を増やすことができます。

賃貸ビルには、テナントに貸すことができる賃貸部と、廊下やエレベーターなどの共用部があります。賃貸ビルの賃料算定のもととなるのは賃貸部の面積のため、共有部は含まれません。賃貸面積を法令上可能な限り大きくすることで、賃料の最大化に繋がります。

建物は法令上、建てることが出来る延床面積の上限が決まっています。建物の面積は賃貸部と共用部でできていますので、共用部を最小化することで、賃貸部を最大化することに繋がります。

賃貸面積を最大化するために検討した図面資料
廊下面積を最小に抑えて賃貸面積を最大化する
日影規制内に最大の床面積を確保した建物の外観写真
大小のボリュームを組み合わせながら、日影規制内に最大の床面積を確保する

ポイント2:グレードを下げないで建築費を減らす

賃貸ビルの建設費にお金をかけないまま建物のグレードを上げることで、事業収支を高めることができます。グレード感の高い建物には高い賃料を設定できる可能性が上がるため、その分、費用対効果が高くなります。

また、グレードを下げないで建設費を減らすことによって、収支上の支出を減らすことになり、結果として事業収支を上げることに繋がります。

一般的には、建物のグレードを上げるためには一定のコストUPが伴います。しかしグレードを上げるために建物全体の仕様を上げる必要はありません。仕様を上げる部分を、日常的に使う所や訪問者の目に触れる所に限定しながら、それ以外の部分を減額をしていくことで、大きな増額にならずに建物のグレードを上げることができます。

仕様グレードを上げたエントランスの写真
限られた部分のみ仕様を上げる(エントランス)
色調の調整で見栄えのグレードを上げたエントランスの写真
色調でグレード感を生む

ポイント3:長期的な事業収支を見越した建築計画にする

賃貸ビルを新築する場合、長期的な事業収支を見越した建築計画にする必要があります。長期保有の場合は、毎月の清掃やメンテナンスに加えて、中長期的な大規模改修を見越した事前計画が必要です。

デザイン性と耐久性を両立した素材を使用することで、補修費用の削減に繋がります。また、防水のグレード落とさずに、工事中の監理をしっかり行うことで、大規模修繕までの期間を長くすることができ、長期的な支出削減に繋がります。

加えて、汚れが目立たない工夫をすることは、将来的な清掃やメンテナンス費用削減のために大切な視点となります。

修繕費を見越した収支計画の資料
修繕費を見越した収支計画
しっかりとした防水性能を確保した屋根の写真
しっかりとした防水性能を確保する

事例紹介:事業収支を最大化した賃貸ビル事例

事業収支を最大化した賃貸ビルの経営を行うためには、収支に配慮した建物の計画が必要です。

ここではoffice EAが関わった実際に賃貸ビルの事例をもとに、事業収支を最大化するために行った工夫を紹介します。

事例1:WING F|賃貸面積の最大化を工夫した複合ビル

駅から徒歩2分にある幹線道路沿いのテナントビルです。1階から5階までをテナントとして、サービス業、事務所、クリニックが入居し、6階~8階を共同住宅、9階をオーナー住居としています。

この複合ビルでは、賃貸面積を最大化するために、廊下面積を最小にする計画をしています。廊下面積の最小化は、階段やエレベーターを最も効率的な位置に配置することで実現しています。

上階のテナントへの集客を促すために、5層吹き抜けのエントランスロビーをつくっています。高さ15mの吹き抜けは、テナントビルとして十分なアピールをしながらも、吹き抜け自体の面積を小さくすることで、テナント面積を圧迫しない計画としました。

幹線道路沿いの立面は、ルーバーや開口部をデザインすることで、ビル自体のアピールを行っています。看板による乱雑な外観にならないように計画することで、クリニックや事務所の品格やグレードを確保する計画としています。

吹き抜けや廊下部分を最小にして賃貸面積を最大化した平面図
吹き抜けや廊下部分を最小にして賃貸面積を最大化する
面積を最小にした吹き抜けの写真
面積を最小にした吹き抜け

WING Fにおける賃料収入最大化のポイント・効果

WING Fにおける賃料収入を最大化したポイント・効果は以下の通りです。

  • 賃貸面積を最大化するために、廊下部の面積を最小化した
  • 賃貸面積の最大化のために、エレベーターと階段の配置を最も効率的な位置に計画した
  • 15mの高さの吹き抜けは、ビル自体のアピールをしつつ、賃貸面積に影響しない最小面積として計画した
  • ルーバーや開口部のデザインによって、存在感のある夜景になるよう計画した。
  • ルーバーなどで立面をデザインすることで、看板による乱雑な外観イメージを避け、テナントの品格を確保した。

事例2:アミーレ新大橋|工事費の増額がないデザインを工夫したマンション

都内の11階建て38室のワンルームマンションです。バルコニー開口のデザインによって多様で特徴的な外観にしています。

この特徴的なバルコニーは、開口の大きさや色を変化させることだけによるもので、工事費増につながらないデザインとしました。

エントランスの一部に限定して高仕様のレンガを使うことで、大きな増額をせずに、高いグレード感をつくり、家賃UPの要素になる工夫をしました

外壁のタイルは安価な45二丁タイルでありながら、ツヤの有無や面状を数種類組み合わせることによって、安価でありながらも印象的な表情をつくりあげました。

一般的な羊羹型の平面とすることで、長期保有のために流行りすたりのない平面計画としました。

工事費が増加しないようにデザインしたバルコニー開口の検討図
工事費が増加しないようにしつつバルコニー開口をデザイン

アミーレ新大橋における賃料収入最大化のポイント・効果

アミーレ新大橋における賃料収入を最大化したポイント・効果は以下の通りです。

  • バルコニー開口部の大きさを色だけに変化を付けることで、仕様UPによる増額に繋がらない特徴的な外観をつくった
  • 一般的な45二丁タイルを、複数の面状やツヤを組み合わせることで、安価ながらグレード感のある表情をつくった
  • 長期保有に有効な、最も一般的な羊羹型の平面とした
  • エントランスの一部に限定して高仕様のレンガを使用することで、最小限の仕様UPが、高いグレード感に繋がるようした
  • 共用廊下の外壁を三角形にすることで、住戸部の面積や室形状には影響しないようにデザインした

事例3:ファーストコーポラス|1階に物販店舗を誘致し、最大室数を確保したマンション

駅前に建つ、1階に店舗を持つ共同住宅の計画です。駅前の立地を生かして、1階をコンビニエンスストアとしました。住居としては人気のない1階を店舗にすることで、効果的に家賃収入を確保しながら、上階の居住者にとって生活上のメリットを生み出しました。

日影規制をクリアするために、住戸のボリュームを小さく分割しながら検討することで、許容容積率内で確保できる最多の室数を実現しました。1室でも多く確保することにより、毎月の収入を上げ、安定した収支経営に繋げました。

また、小さなボリュームに分割する工夫により、単なる箱型でない特徴ある外観をつくり、入居募集時の人気に繋がるようにデザインしました。

敷地の残余部分には、昇降式の駐車場を設置して、駐車場の賃料が更なる収益の増加に繋がるよう計画しました。

日影規制を活かして最大室数を確保したマンションの写真
日影規制を活かして最大室数を確保
小さなボリュームに分割し特徴的な外観をつくったマンションの写真
小さなボリュームに分割し特徴的な外観をつくる

ファーストコーポラスにおける賃料収入最大化のポイント・効果

ファーストコーポラスにおける賃料収入を最大化したポイント・効果は以下の通りです。

  • 日影規制をクリアしながら、許容容積内での最多室数を実現しました。
  • 小さなボリュームに分割した特徴ある外観が、入居者の人気に繋がった
  • 駅前の立地を生かし1階に物販店舗を設けることで、安定した収入に繋げた。
  • 敷地の残余部分に昇降式の駐車場を設置し、更なる収益の増加に繋げた

まとめ:賃貸ビル経営の特性を知り、適切なビル・アパート経営を実現しよう

賃貸ビル経営は、長期間にわたって安定した賃料収入を得られる土地活用方法ですが、土地や規模によって事業が限られるなどのデメリットもあります。事業収支を最大化するために、収益性に配慮したビル建設を実現することが重要です。

この記事のポイントは以下のとおりです。

  • 賃貸ビル経営は、ビルを建設や購入によって所有し、入居するテナントから賃料収入を得る不動産投資方法
  • 賃貸ビル経営は、賃料収入による高い収益性が期待できる
  • 賃貸ビルは、オフィスビルやメディカルビルなど入居するテナントによって賃料や建築費用が異なる
  • 賃貸ビルは、ハウスメーカーや不動産会社、設計事務所など、依頼先によって収益性に影響する
  • 賃貸ビル経営の事業収支を最大化するためには、長期的な収益性を見越した建築計画をすることが重要となる

office EAは、賃貸ビルの企画段階から、テナントビル経営の悩みや課題に寄り添い、収益性の高い賃貸ビル経営・賃貸アパート経営の実現を建築計画を通じてサポートいたします。複合ビル・マンション・テナントビルなどの賃貸ビル経営の方法や賃料収入を最大化したビル経営方法に関してお困りの方は、お問合せフォームよりお気軽にご連絡ください

賃貸ビル経営に関する事例・リンク

サブリース契約とは?意味、費用の相場、デメリット、事例を紹介

賃貸ビルやアパートの経営形態の1つであるサブリース契約について解説している記事です。管理委託や空室保証などの他の方式との違いや費用の相場、契約時の注意事項などを紹介しています。

仕事の進め方

office EAにご依頼いただいた場合の進め方について解説しています。ご提案時の資料や、アフターケアの内容などを確認していただけます。